ベルリン郊外の森で切ってきたモミの木にクリスマスの飾りつけ。  わざわざ森まで行くところがなんとも。 金曜日になると、私のフラットメイトのセリーナ(イタリア人)は彼女の子どもとその友達のためにパンケーキを焼く。 私もまるで彼女の子どもであるかのように、横...

ベルリン郊外の森で切ってきたモミの木にクリスマスの飾りつけ。 
わざわざ森まで行くところがなんとも。



金曜日になると、私のフラットメイトのセリーナ(イタリア人)は彼女の子どもとその友達のためにパンケーキを焼く。


私もまるで彼女の子どもであるかのように、横から“Ummm, Yummy!”とパンケーキの香りを大げさに鼻で吸い込む仕草をすると、「エミの分もあるよ!」と彼女は焼き立てのパンケーキを一枚くれた。ごめんね、欲しいっていうジェスチャーではなかったのよ。パンケーキをどうしても食べたい子どもの浅はかな悪知恵のようで少しバツが悪い。 

パンケーキの材料は、小麦粉とミルク、卵、とてもシンプル。焼きあがったら、バターとキャラメルソースをかけて頂く。

キッチンでがやがや騒ぐ子供たちのイタリア語を聞きながら、ママは大変だね!という意味を込めて、「金曜になると、いつもパンケーキを焼かないといけないね!」と私は言った。

彼女はため息交じりに、イエスと答えたけれど、その後で続けた。

「でもカルロが大きくなった時、金曜はマミーがいつもパンケーキを焼いてくれて、友達と食べたって思い出してくれればいいな。そういう思い出って、消えないでしょう?」

彼女がにっこりと笑ってそう言うと、私の頭の中に小さい頃の思い出がフラッシュバックした。


お休みの日に雨が降ると、私の母はいつもドーナツをつくってくれた。それこそ小麦粉とミルク、それからバターとかの材料に(詳細はわからないけれど)、白砂糖がまぶしてあるだけのとてもシンプルなものだった。けれど、私たち子どもたちの小さな胃袋と満足感を満たしてくれるには十分だった。

ふわふわと柔らかい小麦粉を触りたくてしょうがなかったこと、ドーナツを形にする前にペロッと味見をする時のちょっとした禁断の味、ドーナツを揚げる音を聞きながら待っている時が一番楽しみだったこととか、砂糖をまぶした瞬間のときめきとか、確かに忘れてない。 

あれはまだ、古いおうちにみんなでぎゅうぎゅうになって暮らしていた時のこと。


揚げたてのドーナツの味は、外で遊べない子どもたちの欝々とした日を何か特別なものに変えてくれる魔法みたいだった(でも私は、小さい頃からインドア派だったので、皆が家の中にいることがうれしかった!)。

少し焦げてしまったドーナツをわざわざ父が選んで食べていたことに私は気が付いていた。「お父さん、それ焦げてるよ」というと、「お父さんはこれが好きなんだよ」と父が言った。父が好きというそれは何かとても甘美なもののように見えた。私はそれが食べたくてしょうがなかったけれど、その焦げたドーナツは私やきょうだいの口に入ることはなかった。

甘いドーナツの味はお母さんの味。苦いドーナツはお父さんの味。



何回かこのブログにも書いたけれど、私は雨の日が嫌いではない。むしろ好きだ。

こういう思い出から雨の日が始まれば、雨の日を嫌いになんてなるはずがないよね、とそのことを親に感謝した。

もう亡くなってずいぶん経つけれど、今でも大好きな作家の森瑤子さんは生前、午後4時になると家族も誰もいないリビングで一人でジントニックを飲むのが好きだったらしい。 午前中に家事をすべて片付けて、昼から取り掛かった執筆を午後3時までに目途をつけて、すべて片付いたリビングで一人...

もう亡くなってずいぶん経つけれど、今でも大好きな作家の森瑤子さんは生前、午後4時になると家族も誰もいないリビングで一人でジントニックを飲むのが好きだったらしい。

午前中に家事をすべて片付けて、昼から取り掛かった執筆を午後3時までに目途をつけて、すべて片付いたリビングで一人でよく冷えたジントニックを飲む時、「生きていてよかった」と思うのだと、

同じく作家の山田詠美さんが女性誌のエッセイで書いていた。

まだ若かった詠美さんが、「なぜ午後4時なんですか?」と尋ねると、森さんはそんなこともわからないの?と言いたげに、

「午後3時のお酒はただの自堕落、午後5時からのお酒はカタギの人でも飲めるじゃない」と言っていたのだそう。

午後4時のお酒、作家にだけ与えられた権利。 


私もいつか午後4時のお酒に酔いしれてみたい!と思ったものだった。




何が言いたいかというと、今日私も午後4時からお酒を飲んでいたということ。



もちろん仕事はそれまでに終わらせたけど、作家でもない私の午後4時のお酒は自堕落以外の何物でもないなぁ・・・と思ったという話。



午後4時の、生きててよかった!というお酒はまだまだ飲めそうにない。いつか飲める日がくるんだろうか。 

おしゃれ感も何もない写真で恐縮です・・・